なんちゃって妄想ワールド(Memory)14ジークはロンの下へ来ていた。自分も戦闘機部隊に入れてくれと。 そう申し立てていた。 ロンは悩みこう言った。 「どうしても、か?」 「はい」 それを聞き、ロンが言った。 「次の基地までの間だ。その期間だけ認める。元々白兵専門のお前だ。もしもの事があった時が怖い。陸戦の兵力が減るからな。それを忘れなければいい。機体はユウキの使っていた物を使えばいいだろう」 ジークは一瞬嬉しそうな顔をした。 「ありがとうございます」 礼を言い、彼はロンの部屋を後にした。 ロンはジークが部屋を出た後、独り言を言った。 「溶け込んでいたみたいだな。一時はどうなるかと思ったが」 彼は、ジークが周りの連中と馴染めていなかったのが心配だった様だ。 最近は忙しく、そんな事に気も配れていなかった。 不安要素が1つ消え、ロンは一先ずホッとした。 サミズの現在の針路は、補給とクルーの治療の為、『リカバー』に取られていた。 リカバーは、正式なSIRNの基地ではないし、公にもなっていない。 しかし、現状は専用の医療機関となっている。 連合にも知られないようにはしているが、恐らく薄々感づかれているだろう。 現在地よりリカバーを目指すには、連合の領海内を通過しなければならない。 そこが1つの問題点だった。 ブリッジでは、モニターに映った領海の地図を使い、細かい針路を決めていた。 「最近ではこの辺で偵察機、偵察艦の姿が目撃されているとの事です」 ピットが情報を伝える。 「という事は、また微調整せなばならんか」 ロンがため息をついた。 「一番安全なルートを取るならば、これでしょう」 ピットが言う。 「じゃあ、それでいこう。万が一に備え、領海内に入り次第、第2戦闘配備を」 「了解しました」 サミズの針路の詳細が決まった。 数十分後、連合軍領海内に入り、ジークは機体のチェックをしていた。 「SIRNの物と思って使うと、少し手こずるかもしれませんよ」 整備士がジークに言う。 「そうか。ありがとう」 「いえ。まぁ、ジークさんなら乗りこなせると思いますよ」 ジークに整備士が褒め言葉をかけた。 「どうしてそう思う?」 「そりゃあ、何をやらせても好成績。『天才ジーク』といえば有名ですし」 自分の知らぬ所で、そんなあだ名がつけられていた。 ジークは苦笑し、機体を見上げた。 「ユウキは乗りこなしていたのだろう?」 「えぇ。それはもう、想像を超えて。即興であそこまでとは」 整備士がユウキの操縦技術について語り始めた。 ジークは終始その話を聞き、納得した。 「俺も使いこなしてみせるさ。君たちの仕事がない位に、キレイなままでな」 「へへっ、それは助かります」 やはり、ジークは人との接し方が上手くなっていた。 領海を越えるまでの予測時間が30分になった時、ブリッジではセンサーが何かが捉えていた。 「この熱源は・・・、戦艦クラスです。恐らく偵察艦かと」 クルーの1人が言った。 「ふぅ。最後までスムーズに行かせてくれればいいものを。気付かれているのか?」 「いえ、まだ気付かれていないようです」 ロンは一先ずホッとした。 「前進微速。エンジンは最小限まで抑えろ。必要のない機器は全て電源を切れ。さぁ、気付かないでくれよ」 サミズは敵艦に気付かれぬようにした。 ゆっくり、確実に進んでいく。 その時、再びセンサーに反応があった。 「今度はなんだ」 「戦闘機です!恐らく偵察機が旋回してきたのかと。本艦、ロックされました!!」 「緊急回避!!仕方がない、第1戦闘配備だ!戦闘機部隊第1小隊出撃させろ!!」 ロンが叫んで命令する。 「第1小隊!?ジークを実戦に投入するのですか!!」 「あいつは天才だ。あいつのシュミレーションも見てきた。問題ない」 ピットが言ったが、ロンはジークを信じていた。 コックピット内のジークに、出撃命令が下った。 『ジーク機、発進どうぞ』 オペレーターに言われる。 「ジーク・マクナルド、出るぞ」 黒い翼が大空に飛び立った。 出撃してすぐに敵機が襲い掛かってきた。 「初心者だと思ってなめるなよ」 敵の攻撃を全て避け、ミサイルを食らわせた。 最初の敵を堕としたが、まだまだ終わっていない。 次々と敵艦から戦闘機が飛び出てくる。 『本艦はこれより海域を離脱する。海域離脱完了までの時間を稼いでくれ』 ロンから全機に通達される。 ジークはそれを聞きつつ敵機を堕とす。 そのスピードは凄まじく、敵機は何が起こったのかも分からないまま堕ちていく。 「本当に素人か?!下手すりゃ俺たちより」 戦闘機部隊のパイロットが言う。 「あれだけやられりゃ、俺たちの立つ瀬ねぇよな」 2人の会話は悲しくなる様なものだった。 しかし、それほど凄い才能の持ち主だという事だ。 ブリッジにいるクルーたちは、全員唖然としていた。 「流石、ですね」 「ユウキ以上かな、あれは」 ロンとピットがボソッと言った。 ジークは、息を切らしながら敵機を索敵する。 その時、そこに通信が入ってきた。 『ジーク!このまま一斉射撃で敵艦を堕とす!!』 戦闘機部隊の小隊長だった。 「了解しました」 ジークが応答する。 『タイミングを見誤るなよ!!てーっ!!』 数機の機体から、無数の弾丸やミサイルが放たれる。 敵艦は回避運動を行ったが間に合わず、ブリッジに直撃を食らい、沈んだ。 ジークはその光景を見てホッとした。 『すごいじゃないか、よくやった』 小隊長に褒め言葉を言われた。 「いえ。私に合わせてくれた隊長方の力です」 ジークは、この小隊でも馴染む事が出来た。 サミズは無事に連合軍の海域を抜け、リカバーに到着した。 |